イオンの禁煙施策が横暴すぎると反発の声が続出!強制は違法では?
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小売業大手のイオンが打ち出した従業員への禁煙施策が物議を醸しだしています。
これは、2021年1月25日、グループ従業員約45万人を対象に就業時間内、敷地内での「禁煙」を2021年3月から実施する
というニュースリリース。
目的はお客さま及び従業員間での望まない受動喫煙と三次喫煙を防止するためとしていますが・・
そもそも従業員に禁煙を強制するのは違法ではないのか?
さらには、就業時間45分前の喫煙もやめさせるといった趣旨の説明も記載されており、
業務時間外まで社内ルールで縛ることはできるのか??と話題になっています。
今回はこのイオン禁煙騒動について問題点を整理して、分かりやすくまとめてみました。

従業員の禁煙は違法?

健康増進法が改正され、望まない受動喫煙への対策が「マナー」から「ルール」へ変更になりました。
企業にも防止策を施すことが義務化されたということですね!
段階を踏んでの義務化なのですが、喫煙者にとってはかなり厳しい環境になりました。。
義務化に伴い、敷地内全面禁煙や建物内全面禁煙を実施している企業が増えています。
さらに今回のイオンのように就業時間内まで禁煙する会社も出てきているみたいです。
つまり禁煙を「場所」だけにとどまらず「時間」でも強いるってことですね!

ここでひとつ問題に思うのが、従業員に禁煙を強制すること自体、違法じゃないの??ってことです。
タバコを吸うこと自体はもちろん適法ですし、強制するのは自由を阻害しているように見えます。。。
一体どうなのでしょうか??こちらについて、まず調べてみます。

就業時間内なら強制できる?

会社という組織に属する限り、使用者(=経営者・社長)と労働者(=従業員)の間には権利と義務の関係が発生します。
この関係性から、法的に捉えると、禁煙を強制することができるとされているようです。

使用者は、企業秩序定立権限を有し、労働者の労働義務の遂行について労務指揮権および業務命令権を有します。
 他方、労働者は、企業秩序遵守義務を負い、労働の内容・遂行方法・場所などに関する使用者の指揮に従って労働を誠実に遂行する義務(誠実労働義務)、また、労働時間中は職務に専念し他の私的活動を差し控える義務(職務専念義務)を負っています。
 これらを根拠に、使用者は勤務時間中の喫煙を禁止し得るものと考えられます。

岡本総合法律事務所 
弁護士 岡本 光樹(おかもと・こうき)先生

かなり分かりづらい・・ので整理します。

まず、使用者(=経営者・社長)は以下の権利を持っています。

経営者(=社長)の権利
  • 従業員が気持ちよく働けるようにルールを決めて環境を整えないといけない。(秩序定立権限
  • 従業員がきっちりと仕事をするように「こうしなさい!」と指示を出せる。(労務指揮権および業務命令

という権利を持っています

一方で従業員は、以下の義務があります。

従業員の義務
  • 経営者が気持ちよく働くために作ったルールに従わなければならない(秩序維持義務
  • 経営者が指示した内容に従って誠実に仕事に取り組む(誠実労働義務
  • 就業時間内は仕事に集中し、プライベートな作業は控える(職務専念義務

整理すると、
・経営者が禁煙することが「気持ちよく働くために必要!」と判断し、実施した場合、従業員は従わないといけない!
・就業時間内は仕事に集中しないといけないので、「タバコを吸う」というプライベートな作業は控えないといけない!

だから、禁煙の強制はできる!ってことになります。

非喫煙者にとってたばこの受動喫煙での健康被害はもちろんのこと、あの匂いはかなり不快ですからね!
人によっては気分が悪くなってしまう方もいますので、業務に支障をきたす可能性があるってことですね。。
となると、「みんなが気持ちよく働くため」にはルールとして禁煙を施すのはありってことになります。

じゃあ、喫煙者は?タバコを吸わないと気持ちよく働けない!ってことになりますからね。。
これについては、非常に難しい問題だと思いますが、
個人的な意見としては、タバコは吸わなくてもいいものだし、人に迷惑をかけるからではないか?と思っています。
嗜好品なので吸わなくても生活するうえで問題ないし、健康を害することが多く、メリットがない。
(もちろんストレス解消もあるとは思いますが)むしろ、吸わない方がいい・・
さらには受動喫煙で自分だけでなく周囲の人まで健康を害してしまい、結果迷惑をかけてしまうってことも考えると、
吸う人に我慢してもらうことで、非喫煙者も含めて気持ちよく働く環境を作るのが妥当ではないか・・と思います。

タバコ休憩はサボってるのと同じ??

「タバコを吸う」といういわゆる『タバコ休憩』は就業時間中の離席になりますので、
労働基準法に定められた「休憩時間」ではないといわれています。要は「サボっている」のと同じという扱いになります。。
あくまで法的にはですよ!
喫煙者のタバコ休憩による離席により、非喫煙者の仕事の負担増と不公平感はよく話題になっています。
実際に、具体的に計算してみると、

1日20本吸う人で計算
1回のタバコ休憩が5分として、

1日=たばこ休憩5分×20本=100分(1時間40分)
1ヵ月=100分×20日(出勤日)=2000分(約33時間)
1年=2000分(33時間)×12か月=24,000分(400時間

これ・・計算するとすごいですよね・・
1日でも約1時間。1ヵ月だと33時間!(1日8時間労働だと4日!!)

1年だと400時間!(1日8時間労働だとなんと50日!)
こうみると、確かに・・不公平感があるのも分かる気がしますね!

ただ、非喫煙者も一息つく時間もありますからね・・コーヒータイムとか?
単純にこの時間だけで比べるのはおかしいかもしれませんね!

就業時間以外の場合は?

就業時間内の禁煙は違法ではないのはわかりましたが、就業時間以外に禁煙を強制するのはどうなのでしょうか??
休憩時間まで会社のルールを適応させることはできるのでしょうか??

基本的には休憩時間は従業員が自由に使える時間ですが、会社内でのルールは守らなければならないという
義務は免れないとされています。(秩序維持義務)
会社でみんなが気持ちよく働くために、「休憩時間も含めて禁煙します」とルールを決めたら、
守らないといけない
ってことですね。

実際に最高裁の判例でも、

労働者は、使用者の企業施設管理権や企業秩序維持の要請に基づく規律による制約は免れないと判示されています(最高裁昭和52年12月13日判決・電電公社目黒電報電話局事件。休憩時間中の事業場内におけるビラ配布行為を制限する就業規則の合理性を認め、懲戒戒告処分を有効とした)

となっています。休憩時間にビラ配りを禁止するのは法的には「あり」でこれを違反してクビにしたことは適法!ってことですね。
さらには、通達でも、

「休憩時間の利用について事業場の規律保持上必要な制限を加へることは休憩の目的を害さない限り差し支へないこと。」とされています(昭和22年9月13日・発基第17号・法第三四条関係(三))

と出しています。休憩の目的はタバコを吸うことがメインではないので、制限を加えることもできるということになります。

ということで、結論としては、就業時間外でも禁煙を強制することは違反ではない!ってことになります。

なぜ『就業時間45分前』の禁煙なのか??その理由は??

見てきたように、会社内においては就業時間だけでなく、就業時間外でも禁煙にすることは違法ではないということがわかりました。ただ、今回のイオンのニュースリリースが話題になったのは、それだけにとどまらず、
就業時間45分前」にも禁煙する!という点です。つまり
休憩時間はもちろん、会社外や通勤時間でも(45分前なら)ダメ!ってことですね。。これはかなり厳しい・・
これについては、喫煙後に衣服などから発生するたばこ成分を周囲の人が吸い込む「三次喫煙」を防ぐたとしていますが、一体どういうことなのでしょうか??

三次喫煙とは??

「三次喫煙」というキーワードが出てきましたが、この意味は??調べてみると、
喫煙後に含まれる息や服、髪の毛についた有害物質を周囲の人が吸ってしまうことで「サードハンドスモーク」とも呼ばれています
“喫煙所でたばこを吸った人が部屋に戻ってくるとたばこのにおいがする””ってことありますよね?
この匂いがまさに、「サードハンドスモーク」です。非喫煙者にとってはかなり不快ですよね・・臭い!ですから・・

なぜ45分?その理由は?

かなり厳しいルールではありますが、先ほどの解釈であれば、三次禁煙で健康被害が起きたり不快に感じてしまうことが起きるのであれば、休憩ではない就業時間以外でも禁煙にすることは違反ではないと言えそうです。
業務に支障をきたすと判断でき、秩序維持義務に反しているため

では、なぜ就業時間45分前なのでしょうか??

これは「喫煙者の喫煙後の息(呼気)に含まれる「総揮発性有機化合物」(Total VOC)の濃度が通常レベルまで減るには45分かかる」という産業医科大学などによる研究の結果を踏まえたもののようです。

45分ルールは本当に効果があるの?

実はこの「45分ルール」ですが、イオンより前にも採用されているところがあるようです。

45分ルール採用例
  1. 北陸先端科学技術大学院大学(石川県)
    大学構内の全面禁煙に加え、喫煙者には喫煙後45分間構内への立ち入り禁止措置
  2. 奈良県生駒市
    5階建て市庁舎内のエレベーター内に、「喫煙後45分間は使用をご遠慮ください」との通達ポスターを貼る

しかし、一方でこの45分ルールについては、本当に効果があるのか?と疑問視する声もあるようで、

東海大学理学部化学科教授の関根嘉香氏よると、

VOCは化粧品や自動車排ガスなどにも含まれており、TVOCセンサーはたばこ煙由来の成分以外にも反応することがあります。

 また、TVOCの暫定目標値は、もともと毒性学的根拠に基づいて決定されたものではなく、室内空気質の目安として決められたものなので、一時的に目標値を超えたからといって、すぐに健康への有害な影響が出るというわけではありません。

つまり、たばこを吸って一時的に息の中のVOCが上がったしても健康に害するようなレベルではないのでは?ってことのようです。
どちらが正しいのかは、まだ結論は出ていませんが、大企業であるイオンが始めた45分ルールは今後他企業へも広がっていく可能性はあると思います。

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喫煙者を雇用しないことはできる?

今後このように従業員に禁煙を強制する会社はどんどん増えていくことが考えられます。
さらには現在では、求人情報をみて見ると「非喫煙者に限定して採用します」との表示をしている企業もあるようですが、
これは違法ではないのでしょうか??

経営者は「採用の自由」の権利をもっています。
日本の場合は、一度雇用すると解雇はかなり難しいシステムですし、どんな人を採用するかで業績が左右することもありますから、
原則として経営者に包括的に委ねられるべきとされているようです。
ただ例外として本人の適性や能力に関係のない事柄で社会的差別を招く事項や、基本的人権として尊重すべき権利については、採用の自由が規制される方向にあります。
「男性でないよとダメ!」「年齢が30歳未満でないとダメ!「○○出身の人はダメ!」などです。

となると、「禁煙」は規制される必要がなさそうですので、(社会的差別や基本的人権には関係ない)
雇用条件にできるってことですね。

実際に様々な企業で「喫煙者不採用」の方針を明記・公表していてその理由については、

喫煙者不採用の理由

①労働者の作業効率
②タバコのにおいが染み付いている労働者は、接客相手や他従業員の気分を害する、
③施設の利用効率の低下(喫煙スペースの節約)・資産の劣化、
④喫煙者労働者の離席による非喫煙者労働者の負担増(電話対応その他)、
⑤非喫煙者からの喫煙者に対する不公平感、
⑥企業競争力

と、記載していますね。このようにちゃんと明示することは必要なことだとは思いますね!トラブル防止にもなりますからね!

今回のイオン禁煙騒動の世間の声は?

今回のイオンの禁煙騒動?はWEBを中心にかなり話題になっていて賛否両論があるみたいですね。
では実際に世間の声をみてみましょう!

まずは「賛成派」の意見

一方で「反対派」の声は

完全に真っ二つですね!賛成派はやはり非喫煙者の方が多く、反対派は喫煙者が多いのですが、
非喫煙者の中でも「やりすぎなのでは?」という声が多いですね!
違法ではないにしろ、そこまでやる必要があるのかとは確かに疑問です。。

さらに、以下の面白い意見が多数ありましたね。

  • 先ずは自社の販売から自粛しては如何でしょうか。そんなに害がある物を販売しているのですか?
  • 敷地内で吸えないなら、タバコの販売もセットで止めるくらいして欲しい。売るだけ売って、吸わせないなんて矛盾だろ。
  • そんなに吸わせたくないのなら、タバコなんて売らなければいい。

これかなり説得力ありますね!ここまでやれば従業員も納得しそうですけどね~。実際には難しいのでしょうけども。

まとめ

今回はイオンの禁煙騒動についていろいろ問題点をまとめてみました。日本のTOP企業のひとつであるイオンがこのような試みをはじめたことには評価できますね!今後、喫煙者に対してどのようなフォローをしていくのが課題になるかもしれません。やはり従業員のモチベーションの低下は業績にも大きく影響を受けますからね!これからも少し注目してみたいと思います。

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